毛蟹は、朝鮮半島東岸からベーリング海東部までの北太平洋の広い海域に分布するクリガニ科のカニで、日本近海の太平洋側では、北海道沿岸各地から茨城県まで、日本海側では北海道から島根県まで分布し、水深30-200mほどの砂泥底に生息しています。
オスが甲長15cm程度、メスで甲長12cm程度とオスの方が大きく、体全体が毛で覆われていることから「毛ガニ」と呼ばれ、北海道では「オオクリガニ」とも呼ばれています。
毛蟹の生態はまだ不明な点が多いようですが、魚期は北海道南西部の室蘭近郊の噴火湾では1月から3月、釧路以西ではから8月と11月から翌年の4月となっています。
そして岩手県が12月から翌年3月までと場所を変えながらほぼ1年中どこかで水揚げされています。
毛蟹が食べられるようになったのは戦後のことですが、かつて大量に漁獲されていたこともあり、今では漁獲量が最盛期に比べると1/10程度に減ってしまったことから資源保護のため漁獲制限が厳しくなっています。
漁獲法は、傷付けずに生け捕りできる「蟹かご漁」に限定されていて、メスガニ、甲長が8cm未満、そして脱皮直後の毛蟹は捕獲しても海に戻されます。
漁のできる船の隻数、漁期中の水揚げ総量、船1隻で使えるカゴの数にいたるまで厳しく規制されています。
甲長8cm以上のオスのみの漁獲が許可されていることもあり、毛蟹が珍重されるわけです。
毛蟹の旬は冬だけではありません。
場所により漁期が違うので、ほぼ1年中美味しい毛蟹が食べられます。
春はオホーツク海、夏は室蘭の噴火湾、秋は釧路から根室沿岸、冬は日高、十勝沿岸、そして12月から3月は岩手で、旬の毛蟹が水揚げされています。
春先に獲れる「若ガニ」は脱皮した直後で、身入りが少なくミソも少ないのですが、夏から秋にかけては身入りが良くなり「堅ガニ」と呼ばれ、甘みも増して、毛蟹特有の濃厚な蟹味噌が楽しめます。
やはり冬の季節は、寒さから身を守るために脂のりがよくなります。
毛蟹は、重さ400g~600g 、甲羅の直径が10cm前後のものが美味しいとされ、それ以上のものは「老ガニ 」と呼ばれて味が落ちると言われています。
毛蟹が500gの大きさになるまでには約10年もかかるといわれています。
毛蟹がいかに貴重なものだということがわかりますが、1年中旬の美味しさが楽しめるのも毛蟹です。